甲状腺は首の前にある小さな臓器で、甲状腺ホルモンを作ります。
甲状腺ホルモンは代謝を活発化させ、身体の成長、心身のバランス調整などに関わっており重要なホルモンです。このホルモンの量が多すぎたり少なすぎたりしないように、下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって調節されています。
甲状腺の病気は、疲れやすい、体が冷える、むくみやすい、イライラする、やる気が出ない、汗をかきやすい、動悸がするなど、日常に起こりがちな症状のため気付かれないことがあります。そのため更年期障害やうつ病や認知症など別の病気と診断されてしまうこともあり注意が必要です。
甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンが少なくなり、代謝が低下するため、疲れやすい、体が冷える、むくみやすい、便秘、髪がうすくなるなどの症状が出現します。コレステロールが高くて診断される事もあります。
橋本病/慢性甲状腺炎
甲状腺機能低下症を引き起こす代表的な病気として橋本病(慢性甲状腺炎)があります。橋本病は女性に非常に多く、90%以上が女性です。甲状腺に炎症を起こす自己抗体を持っていることが原因ですが、抗体を持っている人のすべてが甲状腺機能低下症を引き起こすわけではなく、20-30%ぐらいの方に治療が必要になると言われています。
採血で甲状腺ホルモン及び抗体の測定、甲状腺超音波検査(エコー)などを行い定期的に観察します。治療は甲状腺ホルモン補充療法を行います。
甲状腺機能亢進症
甲状腺ホルモンが多く作られてしまい甲状腺中毒症の症状が出現します。
甲状腺中毒症は、代謝が活発になり汗を多くかき、脈が速くなり、暑がりになり、やせます。また、手のふるえやいらいらが出現し、下痢などの症状も伴います。甲状腺機能亢進症の原因としてバセドウ病や下垂体腫瘍などがあります。
バセドウ病
自己免疫疾患の一つで、甲状腺を刺激する抗体(抗TSH受容体抗体)が、甲状腺を持続的に刺激して、甲状腺機能が亢進します。
甲状腺中毒症の症状の他、甲状腺が腫れ、眼球突出などの症状があります。当院では、採血で甲状腺機能や抗TSH受容体抗体を測定し、診断が付けば、専門医療機関へご紹介しています。
治療には薬物療法、放射線療法、手術療法などがあります。薬物療法で落ち着いている場合には当院でも診療が可能です。
その他
亜急性甲状腺炎
甲状腺に炎症が生じ、発熱や甲状腺の圧痛がみられます。また甲状腺が破壊されて甲状腺ホルモンが高値になるため、動悸·発汗過多·体重減少といった甲状腺中毒症の症状が出現します。
風邪のあとに起こることが多く、原因はウイルス感染の可能性が高いものの、はっきりしていません。自然に軽快しますが、症状によって解熱鎮痛剤を内服したり、ステロイドやβブロッカーを内服したりします。
稀に甲状腺機能低下症が持続することがあります。